傷をつけるセピア


それは真夜中に一人で時の流れを感じている
誰にも助けられずに生きているように思える瞬間に
ふと心の縫い目から染みわたってくる
それは傷をつけるセピア
数多くの思い出が 色褪せた過去が
今の自分を刺すように刺激する
それは傷をつけるセピア

ふとした拍子で忘れかけた風景が出てきたとき
忘れかけた匂いが出てきたとき 忘れかけた表情が出てきたとき
過ぎ去ったものが 二度と戻らないという事実をもって鋭利に輝く
わけのない後悔を生みだしはじめる
それは傷をつけるセピア
深く棘が食い込んだように
動くたびに耐えがたい苦痛が走る
それは傷をつけるセピア

現在の足元を支えるもの達が
こちらを蔑むように 哀れむように見ている
傷をつけるセピアは何も言わないままで




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