月姫
Blue Blue Glass Moon, Under The Crimson Air.
製作:TYPE-MOON
発売年:2000年
ジャンル:ビジュアルノベル
対応機種:Windows98 / Windows2000
|
(C)2000 TYPE-MOON
|
不思議な眼を持つ少年がいた
壊れやすい線・世界のほころびが見える直死の魔眼
だが彼は本物の魔法使いに出会い 救われる
そして長く過ごす平穏な時
しかしそこに現れたのが五人の女性
真白き吸血姫 無垢なる絶対力
安らかな時間をつづる先輩 繋ぎ止める釘を打つ者
再会せし妹 朱に染まる紅葉の赤
使用人の双子 青空を駆ける陽光の少女 高窓より見つめる人形の少女
穏やかな時間は過ぎ去り 回天するがごとき激しい日常
それは静かに光る初秋の月の下で
これは同人ゲームです。正式な会社の製作したものではなく、数名の個人によるサークル活動から生み出された作品です。
ですがこれが、半端なゲームとは比較できないほど素晴らしいものなのです。
ジャンルはビジュアルノベル。画像と文章を読みすすめながら、ときどき出てくる選択肢を選んでお話を進めていくタイプのゲームです。
主人公の遠野志貴は富豪の息子でしたが、子供のときに事故をきっかけにして家から追い出されて、一般市民たる親戚の家で育つこととなります。彼は奇妙な特殊能力を持っていますが、ある人から貰った眼鏡でその力を封印して、ごくごく普通の生活を送っていました。
ところがある日、自分を勘当した父親が亡くなり、一族の当主となった妹が彼に戻るようにと言ってきます。それに従って、丘の上の大きな屋敷に戻るところからお話が始まります。
ストーリーは大きく表と裏に分かれており、表では吸血鬼との戦いと不老不死を描いたお話。裏では妹や幼馴染との失われた過去を取り戻す、という話になっています。
このゲームでともかく注目してほしいのはシナリオです。引き込まれるような独自の世界観と迫力で、思わず時間を忘れて読みふけってしまいます。
傾向としては、荒木飛呂彦と上遠野浩平、という感じでしょうか。西尾維新もよく似ているのですが、この方はデビューが月姫発売より後ですので……(そこはかとなく危険な発言)。
※荒木飛呂彦 漫画家。代表作は「ジョジョの奇妙な冒険(ジャンプコミックス)」など。とても好み。
※上遠野浩平 作家。代表作は「ブギーポップは笑わない(電撃文庫)」など。すごく好み。
※西尾維新 作家。代表作は「クビキリサイクル(講談社ノベルス)」など。かなり好み
ゲームをプレイしていて強く思うのが、なんでもない日常がいかに大切であるかということです。
頻繁に挿し入り混じりあう非日常。それによっていつもの何気ないヒトコマがいかに素晴らしいことであったか。それを強く実感させられます。
それと、健康がいかに大切であるか。ということもひどく実感させられます。
とある事情で頻繁に貧血を起こしたり倒れたり寝たきりになったりする主人公を見て、なんでもなく立ち・歩き・呼吸できることがいかに素晴らしいことであったか。と思わされます。
一瞬、逆病弱系ゲーム。などという言葉が頭をよぎったほどです。
意外に評価されていることが少ないのですが、個人的に背景のグラフィックもすごいです。
実写取り込みを加工したものですが、ここぞ!という風景が切り取られており、それに感動した私は、しばらく外を徘徊して風景をデジカメで撮りまくってしまったほどです(惚れやすい性格)。
――と、いうように素敵なゲームです。私が2001〜2002年にかけてプレイしたなかで、1,2を争うほどの傑作だと思っています。
プレイ時間がやや長すぎる(スキップ機能未使用で、1プレイに約8時間)という欠点もありますが、それを欠点とは思わせないシナリオと演出です。
……ふと、空にかかる月を仰ぎ見たくなる。
そんな、作品です。
そういえば、
言い忘れてましたが、18禁ゲームでした。
……なんていうか、もう、台無し。
|