ゴジラ モスラ キングギドラ
大怪獣総攻撃


東宝  2001年





 今回のレビューは「薄葉陽炎」の陽炎さんとの同時レビューです。
 なぜ私の方が3週間も遅れているかは気にしないで下さい。



 ゴジラ。

 それは少年ならば誰もが観た映画でしょう。というか私が子供のころは、映画館で見る子供向け大作映画はゴジラかドラえもん、あるいはディズニーでした。
 電気ネズミがギャルギャルした声で鳴く映画など、影も形もなかった良い時代でありました(問題発言)。
 そんな名作シリーズ・ゴジラですが、なぜか大人になったとたんに極端に観にいくことがなくなります。ドラえもんもそうですが、大人の視聴にも十分耐えられる作品なんですがねぇ……。やはり「子供専用」というイメージが強いのでしょう。
 さて、そんなわけで私も最後に見たのはゴジラVSデストロイア(1995年)が最後です。それ以来ゴジラシリーズにはご無沙汰でしたが、友人の陽炎さんの薦めで今回久しぶりに鑑賞することとなりました。

 観始めて、まずその表現方式に最初から驚かされます。
 一言で表現すれば、蘇れ!無窮の歴史『昭和』よです。
 冒頭のスタッフロールは筆字風の書体でしかも縦書き。背景は全体的に暗く、これからまるで時代劇でも始まるかのようです。
 そして実際にお話が始まると……怪獣が出てきません。今までですと、序盤でとりあえず怪獣が出てきて軽く一戦、というイメージでした。ですが序盤は延々と世界描写と伏線作りに費やされています(今回は自衛隊ではなく防衛軍になってるとか)。
 これは途中退場がまずありえない、映画だからこそのメリットでしょうね。

 ここでそれを延々と描写してもしょうがないので、怪獣登場シーンまで話を進めます。
 中盤に入ったところで、ようやく怪獣が姿を見せます。地中から地響きとともに現れる怪獣バラゴン!

 ……まて。
 バラゴンなんてタイトルにありませんでしたよ。そもそもなんですか?バラゴンって。

陽炎 「ああ。『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年)に出てきた怪獣」

 知るわけ無いです。
 65年って、私の父が子供だった時代じゃないですか。なんでいまさらバラゴン……。
 などと思っているうちに、ちゃんとゴジラも出現しますので一安心。
 今回のゴジラは、私が見慣れた平成版ゴジラとはだいぶ違います。顔つきが悪く体型が人間的で、動きがやけに機敏です。やはり、どちらかといえば昭和版ゴジラに近いですね。
 そして、観ていて目に付くところが、ゴジラの破壊対象の違いです。
 平成版では自衛隊やGフォースとの華やかな戦いばかりでしたが、今回のゴジラはやけに一般人を襲います。女性・おっちゃん・入院患者など、弱者に対しての殺戮を繰り広げます。やはり、
20世紀は戦争の時代、21世紀はテロの時代
ってことでしょうか?
 ……いやな解釈。まあさすがに子供殺戮シーンはないですが。


 バラゴンとゴジラは惹かれあうようにして箱根山中に到着。お互いに激しい戦闘を行います。
 バラゴンは地底怪獣の名に恥じず、いきなり地下に潜りはじめます。なんだ、逃げたのか?などと思っていると、突然地面が崩れて飲み込まれるゴジラ!
 すごい!獣っぽいバラゴンが、知的にトラップを使った戦術を使っています。
 でも、ゴジラは下半身が埋まった程度。ダメージ0です。
 次にゴジラの腕に噛み付くバラゴン!光線とかないのか!?バラゴン(ないです)。
 案の定、ゴジラに振り払われて吹き飛ぶバラゴン。そこにやけに強力なゴジラの放射火炎!!いや、熱線かな?とにかく平成版とは段違いの威力です。放射した瞬間、画面とか真っ白になるし。
 しかしバラゴン、なんとか一撃を耐え切る。逃げ出そうとするがそこにゴジラのキック!というよりはストンピング!
 格闘素人にも、リアルにダメージのわかる攻撃方法です。そのままボコボコにされた上に、とどめに熱線。バラゴン蒸発。

 ……怪獣映画で、ここまで一方的に痛めつけられたのを観たのは初めてです。バラゴン、ただのやられ役でした。まあ、所詮タイトルにも入ってないし。

 噛ませ犬を倒し、悠然と東京に向かうゴジラ。防衛軍が攻撃をしますが、熱線によりあっさり敗北。
 というか、今回のゴジラの熱線は強すぎます。怪獣をも蒸発させる火力に、連続発射時間が10秒くらいあったりします。その上、エネルギー充填の隙なども見当たりません。
 よってゴジラ、熱線だけで防衛軍を蹴散らします。戦車を踏みつけたり戦闘機を叩き落していた時代に比べたら、格段の近代化ですね。

 首都を背にして、防衛軍は横浜に最終防衛線を用意します。D−03削岩弾なるものを弾頭にしたミサイルを武器に、地上部隊と東京湾の護衛艦との一斉攻撃で葬るつもりです。
 この削岩弾ミサイル、一言で言えばドリルミサイルです。まさに昭和が蘇っています。
 ……ここで、ゴジラを待ち受けながら防衛軍司令官の橘准将が語ります。

 実戦経験なき事こそ最大の名誉でした……
   防人(さきもり)の想いは古より皆同じです

 もう、このセリフでメロメロになりました。自衛隊(ここでは防衛軍ですが)と防人との同一視!戦いを望まないが死地に赴く男の姿!
 陽炎さんがこれを見て「日本にしか通用しない名言」と語りましたが、まったく同感です。


※ちなみに「防人」というのは、古墳時代に設置された、北九州を防衛する兵士のことです。
当時の世界最大国である中国からの侵攻に備えたものなので、防人が戦うときというのは、大和存亡の危機です。


 横浜に到着したゴジラの前に現れたのは防衛軍だけではありませんでした。モスラも同時にたどりついています。
 防衛軍の戦闘準備が整う前に、ゴジラとの戦いを始めるモスラ。
 ゴジラの熱線をモスラは必死にかわします。狙いを外した熱線は防衛軍に襲い掛かります。いい迷惑です。
 ゴジラの圧倒的優勢で進む戦いに、防衛軍が反撃を行います。一斉にドリルミサイル発射!でもあんまりダメージありません。
 そこにゴジラの反撃が襲いかかります。例の持続時間の長い熱線で地上部隊壊滅。続いて東京湾の護衛艦にも熱線発射。護衛艦大破!……射程何kmですか?

 最後の真打はキングギドラです。先ほどの横浜決戦の時にも途中から出てきましたが、そのときはいまだ不完全体の「ギドラ」でした。ですがゴジラシリーズっぽいパワーアップ方法で「キングギドラ」に進化し、東京湾でゴジラに立ち向かいます。
 このキングギドラ出現シーンは、ゴジラシリーズで最高ともいえるかっこよさです。でもやっぱりゴジラ相手に劣勢。

 ……やられっぱなしの防衛軍。最後の攻撃として、東京湾内のゴジラに対し、D−03削岩弾を装備した特殊潜航艇を向かわせます。なにを思ったのか司令官の橘准将が直々に搭乗しています。
 ふと思いましたが、まるでドリルミサイル抱えた攻撃機に乗ったドメル将軍みたいです。蘇れ!昭和!
(ドメル将軍:「宇宙戦艦ヤマト」に登場する敵の名将軍)


 そして結末は……まあさすがにそこはバラしません。ですが保障できます。
 蘇れ!昭和!です。






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