ウイングアームズ 〜華麗なる撃墜王〜
セガ 1995年 3Dシューティング セガサターン
第二次世界大戦が終結して数ヶ月……帝国軍と連合国軍の戦いによる痛手から世界は立ち直ろうとしていた。
だがそこに「アヴァロン」を名乗る謎の組織が現れた。
彼らは帝国軍の新兵器設計図を盗み出して恐ろしい軍隊を結成、連合国軍の艦隊に攻撃を開始した。戦争によるダメージから立ち直っていない連合国軍の艦隊は壊滅状態に追い込まれた。
このままでは太平洋の資源地帯全域をアヴァロンに奪われてしまう。そうなれば、本当に世界が征服されてしまうかもしれない。連合国軍は必死で戦力の建て直しをはかった。
一方、連合国軍の中で空母「エンタープライズ」は唯一無事であった。連合国軍はエンタープライズに7人のエースパイロットを送り込み、アヴァロンの資源地帯侵攻の阻止を託したのであった……。
一読していただくとわかりますが、とても大味なストーリーです。まるで戦前の少年向け小説のようです。しかもツッコむところだらけです。
まず帝国軍ってなんですか?まあ確かに「大日本帝国」とか「ドイツ第三帝国」とかですけど……普通は枢軸軍って言いません?
しかも連合国軍の艦隊を壊滅させた軍隊に、たった空母一隻&航空機7機で進撃を阻止しろと命令しています。これに比べれば神風特攻隊が正常に見えます。
しかも、その7機の航空機ですが……
・三菱零式艦上戦闘機
・グラマンF6Fヘルキャット
・九州J7W震電
・ノースアメリカンP−51マスタング
・スーパーマリーン スピットファイアMk.1
・ロッキードP−38ライトニング
・メッサーシュミットMe262シュワルベ
この7機です。これまたどこから指摘すればいいかわからないぐらい問題満載です。
まず、戦闘機しかいないのはどういうことでしょうか?しかも空母で使うはずなのに、空母で運用できるのは2種類だけです(零戦とヘルキャット)。
それにスピットファイアがいまだにMk.1というのは何ですか?(スピットファイアMk.1は戦前に開発された旧式機)。
あと……いや、もういいでしょう。これ以上機種についていちいち指摘していたら、原稿用紙40枚分くらい書いちゃいそうですから。
そしてこのゲームは間違ってもフライトシミュレーションではありません。あくまで爽快感あふれる3Dシューティングです。
なにしろこのゲームでは航空力学の原理が省略されています。
たとえば、スロットルというものがありません。あるボタンは「スピードアップ」と「スピードダウン」。もちろん、急降下中でもスピードダウンボタンを押せばスピードはダウンします。
さらに初心者向けなのか、航空機が異常に硬いです。もはや航空機なんて物ではありません。バリアでも使っているみたいです。
具体的な例をあげれば、岸壁に正面衝突しても落ちません。耐久度が5%くらい減る程度です。ですので、たとえ紙のように装甲の薄い零戦であろうと、戦艦の主砲の直撃を食らっても落ちません。正気の沙汰ではない硬度です。
さらに、たった1機の戦闘機で敵の要塞・戦艦などを叩き落とすために、全種類の戦闘機にロケット弾装備です。最大装備数は99発。もちろん機関銃も弾数制限無しです。
……確かにこんな尋常でない戦闘機が7機あれば、一国の軍隊の侵攻でも食い止められそうな気がしてきました。
まあこんな気の狂ったシステムですが、とりあえずゲームを始めてみましょう。
ステージ1は、敵の航空機を撃墜する任務です。まあそれはいいのですが、最初に出てくる5機編隊は真っ直ぐ飛んでいるだけです。なんもしてきません。
それを叩き落すと、次の5機編隊はなんだかフラフラ飛びます。いちおう回避運動をしているのでしょうか?
その次のヤツは、分散して逃げ回ります。運動テクニックも少し高度になっています。
……もしかして、いま攻撃している敵航空機って、ヒヨっ子の乗っている練習機なのではないでしょうか?そう考えるとなんかちょっと罪悪感があります。
「悲しいけど、これって戦争なのよね」
ちなみに、このゲームにおいての対戦闘機の空中戦ミッションは、ここが最初にして唯一です……。
さて、狂気に包まれたステージ1をクリアしてステージ2です。こちらは海上に浮かぶ敵補給基地を撃破するミッションです。
この要塞というのが、ボンボン弾幕を張ってきます。たかだか1機の戦闘機相手にロケット砲まで打ち込んでくる始末です。最初にプレイしたときは、必ずその弾幕の凄さに慌てます。
慣れると平気で正面から突っ込んでいけるあたりが、ちょっと実戦ぽくてリアリティがあります。
さて、その補給基地を機関銃とロケット弾だけで破壊しましょう。
その次に敵空母が出現します。これも機関銃とロケット弾で始末しましょう。
ロケット弾は次のステージに持ち越されるので、後々のためにここは機関銃だけにしたほうがいいかもしれませんね。
機銃掃射だけで大爆発を起こしながら轟沈する空母……もしかして木製ですか?
ステージ3は、山岳の奥深くに建造された要塞を撃破するミッション。あきらかに戦闘機を出撃させるのは間違いです。
まず序盤は敵偵察機を追って谷間をかけぬけます。谷幅が10mくらいしかないところを通ります。こんなところを戦闘機で通ろうとするほうが無茶苦茶です。
でも大丈夫。硬いから1回や2回くらい崖に当たったくらいじゃ死にません。
ですが油断は禁物です。ポリゴンの当たり判定が適当なので、たまに当たったまま崖から抜けられなくなって死にます。
ちなみに、このステージで出現する要塞をすべて破壊すると、いきなり階級が最高になります……なにか間違っていませんか?
ステージ4は、突然エンタープライズが敵に発見され攻撃を受けるので、それの護衛です。敵さんは、最初はロクに当たらない水平爆撃を繰り返すのですが、中盤からヤケになったのか特攻してきます。
この特攻してくる敵をなんとかエンタープライズの対空砲火と協力して撃墜します。
そうそう、ちなみに味方の弾は当たらない親切設計です。
さて、航空機を倒すと、今度はどこからともなく駆逐艦・巡洋艦・戦艦が現れます。これがエリア外から出てくるというのならまだ可愛げもあるってもんですが、何もない海域に見てる前で突然出現します。……瞬間物質転送機?
巡洋艦とかを追って空母から離れた所で、突然空母のそばに戦艦など現れると大慌てです。
でも敵の砲弾の命中率は目をつぶっているのではないかと思うほど低いので、これまた親切設計を感じます。
ステージ5は無差別爆撃を開始した敵大型爆撃機を撃墜することです。
で、現れる爆撃機は富嶽です(日本の図面だけしか出来てない超巨大爆撃機)。
まあ、それはいいとしましょう。問題は護衛戦闘機です。
大型爆撃機についてくるんだから、てっきり長距離戦闘機が来るもんだと思ったら、なぜか桜花です。
そう、あの日本の特攻専用ロケット機です。しかも無いはずの機銃も付いてます。
でも、特攻機なので主な攻撃は体当たりです。まあ、もちろん5回10回じゃ敵もこちらも落ちませんが。
こいつらが10機ぐらい列になってぶつかってくる様は、なかなかの恐怖を感じます。ですが、同時に心のどこかで果てしない違和感を感じます。
とりあえず富嶽は柔らかいのであっさり倒せます。ときおりこちらの行けない超高空に逃れて一方的に攻撃してきたりしますが、まあ弱いのでそのくらいは見逃しましょう。
さて、最終ステージの6です。ここででてくる敵は戦艦大和です。いや、大和かどうかはわかりませんが、大和級なのはたしかです。……しっかし、アヴァロンが盗んだのは図面だけだったはずだが。よくそんなもの作る金と時間があったなぁ。
えー、大和ですが、壮絶な砲撃力を持っており、対空砲火も画面いっぱいに広がり、このゲーム最大の見せ場となっております。
主な倒し方は限界高度まで上昇して、敵上空で急降下。そしてロケット弾と機関銃を撃ち込める限り叩き込むだけです。
やってはいけないのは、敵の真横から水平に突っ込むことです。ですが、凄まじい対空砲火を見たいがためによくやってしまいます。
――まとめですが、発売がセガサターン黎明期ということを考えれば、よく出来ているほうではないでしょうか?
このゲームの最大のウリは対空砲火です。もう対空砲火を見せたいが為にこのゲームを作ったのではないか?と疑わせるほどの素晴らしさです。
敵戦艦の横腹に海面スレスレで突撃しつつロケット弾発射。敵のマストを飛び越えた瞬間に視点を後方に切り替えて、戦艦の猛烈な機銃弾が追ってくるのを楽しむ。……そんなゲームです。
でもサブタイトルは「華麗なる撃墜王」。いっそ「撃沈王」の方が良かったんじゃ……。
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