特設・逆行近況






 逆行近況とは時間を逆行してゆく近況です。あまりに無更新の期間が長かったので特設した企画です。ちょっと他では見られません。(無意味な差異をアピール)
 いつもの近況とは順番が逆になっているのでご注意ください。いっそのこと右から左に書いてやろうかとも思いましたが、いろいろアレなのでやめました。
 それでは、普段と変わらぬ気楽さでお楽しみください。


8月1日
 ようやく北海道に帰れる日がやってきました。こんな暑い南の島から脱出し、懐かしい北の祖国に帰るのです!(なんだか語弊のある言い方)
 さて、札幌=鹿児島間は飛行機の直行便もあるのですが、実は東京や名古屋で乗り換えた方が安くなることがあります。今回もそのプランを利用し、なぜか名古屋まで迎えに来た母親と合流します。
「さーて、じゃあ青森に行くからね」
 そんなこと聞いてないし!
「じゃあ今晩は美味しい料亭に行こうか?」
 ……そう誘われたら私に拒否する理由もございません。なにしろ鹿児島では毎日のようにグラム50円とかの鶏肉を焼いて食べる毎日。ごちそうには飢えているのです。
 そしてここは名古屋。名古屋と言えばきしめんうみゃー味噌カツうみゃーな食の大都市です。ボリュームのあってかつ美味しい料理が期待ができます。
 そして連れて行かれた料亭はとても高級そうで、大きくこう書かれていました。
『加賀料理専門店』
 名古屋なのになんで石川県!?
 なんか精進料理のようにやけに淡白な海の幸を味わいながら、それでもその味には感謝せざるをえませんでした。


8月2日
 というわけで青森にやってまいりました。
 昼間は遺跡やストーンサークルを見学しつつ、夜にはお目当てのねぶた祭。地元の知り合いに案内されつつ見学です。
 夕方にお祭りの準備がされているのを見ていると、どこからともなく警官が大量に出てきました。ざっと見た感じ1000人ほどいそうです。
 思わず地元の人に尋ねます。
「なんであんなに警察だらけなんですか?」
「あー、あれね。ねぶた祭にあわせてカラス族って暴走族の集団が出るの。これを押さえる為に県外からも増援を頼んでるんだよ」
 なんだか、生々しい話です。祭りの裏舞台といったかんじです。
 さて、そうこうしているうちにねぶた祭が開催されました。

かけ声一つでグルリと回る様は壮観です。

 TVでは何度も見たことがありますが、目の前で見るとなかなかの迫力です。なにしろ小さな家ほどもあるねぶたが道路を走り、そしてときには1回転するのですから。
 しばらくねぶたに酔いしれますが、気が付くとなんだか周囲がカップルばかりです。若い男女のペアに囲まれ、私は母親や地元の知り合いのおじさんと一緒でなんだか居心地が悪いです。
 地元の人が言います。
「いやあ、毎回ねぶたのあと数ヵ月後には産婦人科が大繁盛するんだよねえ」
 ……だから、どうしてそんな祭の裏舞台の生々しい話をするんですか。


8月3日
 ようやく実家に帰ってきました。
 なんだかしばらく居なくなっているうちに、私の部屋が完全に物置と化していたりしていましたが、それ以外には大きな違いもありません。
 ……などと思っていたら、いつのまにか浴室と洗濯室にエアコンが設置されていました。しかもリビングに見慣れないテーブルが増えています。実に4個目。なんかテーブルだらけです。
 私は母に尋ねました。
「ねえ、なんでこの家は帰ってくるたびに必ず改装されていたり家具が増えてるの?」
「あ、気づいた? ねえねえ、このテーブルいいと思うでしょう!」
「いや、そういうことじゃなくて……。なんかそのうち、巨大ロボットに変形しそうな気がしますよ」
「面白いねえ、それ」
「やりそうで怖ええ! ……あのですな、ウチって財政が厳しかったんじゃなかったっけ。こんなの買ってる余裕ないんじゃないの?」
「…………えっ?」
 なにそれって顔をされました。こっちは仕送りまで減らされたというのに。
 まさか、家を改造しているから財政がピンチになってるのでは……。


8月4日
 札幌が鹿児島に勝るところ。それはゲーマーズがあること、メロンブックスがあること、とらのあながあること、らしんばんがあること、メイド喫茶があること……(どんどん嫌な気分になってきました)
 ……さて、ゲーマーズは本を買ってもポイントが付きますが、これって書籍の再販制度に違反してないんでしょうか?
 なにしろ、他の本屋ではポイントもなにもないのでゲーマーズで買ったほうがお得です。みんながゲーマーズで買うようになれば、他の本屋は商売上がったりです。そうすると、ゲーマーズによる書籍小売業界の独占となり、自由競争経済に反することになります。これは大変な問題です。
 ですが、ポイント貯めても貰えるのはデ・ジ・キャラットとかギャラクシーエンジェルのグッズばかりなので、諸人こぞりてゲーマーズにという状況にはなりませんのでご安心ください。
 でも、最近はアニメイトでも書籍でポイントがつくようになりました。やはり上記のような問題があるからでしょうか。


8月5日
 気がつくと私の母親がなんだか痩せていました。
 昔はもっとまるまると太っていたはずなのですが、しばらく見ないうちに細くなっています。
 考えてみれば私の母ももう50歳近くになります。いつまでも若いイメージでいたのですが、やはり確実に年をとっているのです。
 「なんだか痩せたね」と私が口に出すと、母は嬉しそうに答えてきました。
「そう? やっぱり最近になって毎日腹筋50回やってるからねえ」
 ……なんでそんなに若いんですか?


8月6日
 実家というものはよいものです。冷蔵庫のなかにたくさんものがありますから(もっと他の誉め方はないのか)。
 というわけで冷蔵庫から勝手に食材を出して適当に料理して食べていると、母親からメールが来ました。
『今晩、車で摩周湖に行くから交代要員としてよろしく。今から寝ておいて』
 ……え?
 摩周湖というのは霧で有名であり日本一の透明度をも誇る湖です。透明度では世界一ではないかとすら言われ、ソ連(当時)のバイカル湖と頂上対決を挑んだこともあります。惜しくも摩周湖は敗れたのですが、なにしろソ連なので不正測定疑惑が色濃く、そのために世界2位ともはっきり言えずパンフなどには『世界有数の透明度』などという表現を使わなくてはいけないほどです(そんな黒い話するな)。
 まあそれはいいとしまして、摩周湖があるのは北海道の東です。一方、私の実家がある札幌は西です。他府県の方にはこの凄さがわからないかもしれませんが、北海道は東西に500kmほどあります。端から端へというわけではありませんが、それでも片道400kmぐらいは走ります。
 それを二人で、徹夜で。正気の沙汰ではありません。
 などとブツクサ言ったものの、結局は行くしかありません。隣に寝ている母親を乗せながら夜の高速をひたすら走ります。
 北海道の東に向かう道東自動車道は日本有数の採算が取れない高速道路で、周囲には他の車の姿など見当たりません。しかも原野のど真ん中を走っているのか街の明かりなども見えず、延々と続く街灯だけしか目に映りません。なんだかまるで催眠術にかけられているような感じになってきます。
 などと考えながら運転していると、母が突然悲鳴をあげて飛び起きました。
「なに? 大丈夫だから! なんもないから!」と慌てて慰める私。母は深呼吸しながら「あんたが居眠りしていて、車が路肩から落ちそうになった夢を見た」と言いました。さらに続けて「だからあんたの運転は信用できないんだ」などとも呟いています。
 私、なんの落ち度もないのに責められてます。なぜー。


8月7日

白に沈んだ世界
四方の雲は天球をかたどり
端より金色に染められてゆく
神の湖は一糸もまとわない
山肌を駆け上がる霧はまだ遠く
白の月が静かに見つめていた


 と、いうわけでやってまいりましたよ摩周湖に。

霧がないのはかなり珍しいです。幸運でした。

 霧で有名な摩周湖ですが、今回は湖面には一片たりとも霧がありません。その代わり周囲の山々がすべて霧に包まれており、とても幻想的な風景です。これだけで来て良かったと思えます。
 さて、そのあとは延々と帰り道が待っています。往復すると札幌まで800kmほどの道のりです。しかも寝ていません。
 母と交代しながら運転しますが、二人なのでろくに休めません。
「眠い、次のパーキングエリアで交代して」
「え? さっきしたばっかりでしょ」
「死にたくなかったら言うことを聞きなさい」
 ……さすがに徹夜は無理があったんじゃないかと。


8月8日
 さあ、実家でグダグダするかぁ! と思っていたら父親から「お盆は忙しいので手伝え」との命令が下されました。
 私の父は花屋に勤めており、お盆というのはたしかに多忙な時期です。さすがに父親にだけ午前様させて私はグダグダしているわけにもいきません。
 と、いうわけで花屋の店内で菊の葉っぱをむしったり、ゴムでしばったり(仏花製作)。
 もくもくと働いていると他の社員の方が「学生最後の夏休みだってのに、わざわざ手伝いに帰ってくるとは律儀なこった」と茶化されました。
 いや、私もそこまで真面目なわけではないのですが……。


8月9日
 先日から父の会社(花屋)でバイトしています。ここは高校時代によく働いていた場所で、職場の上司と久々に会って懐かしがられたりしていました。
 「久しぶりだねー」「前より細くなったねー」「なんか痩せたねー」「鹿児島って暑いからだろうねー」「ちゃんと食事とってる?」などの声が。
 ……そんなに食費を削った覚えはないのですが。いや、自衛隊員から分けてもらった缶詰を一日一食とかはやってましたが。
 さて、昔からの上司先輩は、数名が退職しているくらいでほとんど変わっておりません。しかし私より遅くに入ってきた新人さんが、立派な店員となって第一線でバリバリ働いています。昔はいろいろ質問してきた人だというのに、今では私を自在に使いこなせる人材へと成長していました。いや、たかがバイトの私が偉そうに実感するのもなんですが。
 なにかこう、私だけが時間の止まっているような、そんな錯覚がしました。


8月10日
 ある韓国ドラマのウェディングシーンを見ての一言。
「あれ? 韓国の結婚式ってたしか合同でやるんじゃ……」
「ば、バカー!!!」
 ――大変不適切な発言があったことをお詫びいたします。
 しかし、最近は朝の6時半に起きて夜の12時に寝る健康的な生活を送っています。これもバイトをしているため、正しい生活リズムが必須となっているためです。
 勤労というのは収入のほかにもこんなメリットをもたらしてくれるのですねぇ。
 ……しかし、グータラしていた生活が懐かしいのはどうしてでしょう。


8月11日
 ある日の夜。私に向かって母親がしみじみとこう言いました。
「あんたがもし、就職が決まらなかったらさあ」
「うん」
「わたし、あんたをドイツに留学させようかと思ってたの」
「うん…………はぁっ?」
「だってほら、あんたドイツ好きでしょ。ナチスとか」
「ちょ、ちょっとまてぇい! なんでそんなわけのわからん理由で!? そもそも、留学してなにを学べというのですか!」
「えーと、経済学」
「私が今まで学んできたことと、まったく分野が違いますよ!」
「だって、わたしの野望の為には、経済の専門家が身内に一人欲しいのよ」
「なに企んでるんだぁぁぁ!!」
 ……ちゃんと就職できて良かったです。


8月12日
「なあなあ、今晩ちょっと付き合ってよ。ウチ、晩飯なさそうなんだよ」
「おお、いいねえ。じゃあステーキハウスに行こう」
「ステーキハウスな。ここいらで仕事疲れを発散しないといかんしなあ」
「よし、じゃあステーキで一杯いくか!」
「いや、酒はダメだ。だって運転しないといかんし」
「ならばスープバー」
「……ああ、スープバー」
「今晩は思う存分飲み明かそう! コーンスープを!」
「いや、それはちょっとどうかと……」


8月13日
 というわけで引き続き花屋でバイトしているのですが、ふと気付いたことがありました。
「なんかこの会社の車って、全部三菱車だね」
「デリカとミニキャブに、俺が使ってるのがギャランだからな」
「なんでだろう? 火を吹くから安いのかな?」
「いやいや、その問題が出る前に買ったやつだから!」
「次の営業車はランサーエヴォリューションとかになったら面白いのに」
「そんなスポーツカー、なんに使うのよ」
「峠を越えた隣町に、誰よりも早くアレンジフラワーを届ける!」
「……普通に花キューピット使って隣町の花屋に作らせろ」


8月14日
「仏花が出来たらまた仏花、ぶっちゃけありえない♪」
「いや、なんでプリキュアなんだ」
 そんなこんなでバイトで仏花ばかり作っています。
 お盆にみなさんがお墓参りするときに捧げる仏花は、このようにバイトさんがプリキュア歌いながら作ったものかもしれません(風情のカケラもない)。
「別にお盆にお墓参りしなくてもいいのにね」
「そうだねえ」
 疲れてくると、こんな会話まで出てきます。
「一年でバラバラにすればいいのに。なんか一族ごとに『墓参の日』みたいのを作ってさ」
「そうだねえ」
「というか、別に花なんて墓前に捧げなくてもいいよね」
「そうだねえ」
「でもそうなると、花屋は大損害だね」
「そうだねえ」
「…………」
「…………」
「…生命の花 咲かせて思いっきり♪」
「もっとバリバリ♪」
 疲れてくると、おおむねこんな感じです。


8月15日
 今日は終戦記念日です。この日の札幌では正午から突然豪雨と落雷に見舞われ、バイト先の休憩室でNHKをつけながら直立黙祷していた私とその友人を驚かせました(なにやってるんだ)。
 さて、お盆も山場を過ぎて忙しさはどこかに消えうせ、みんなどこか気の抜けた感があります。バイトである私にもなんの仕事も入らずに、ただ延々と待機時間が続くだけです。
 あまりにも退屈なので、こっそり携帯のアプリでゲームをしていたら見つかって怒られました。
「仕事中にゲームとはいいご身分だな」
「え、でも今は待機中で、それにいつでも仕事に移れる態勢は……」
「いいわけするな!」
 今考えれば正当な叱責なのですが、そのときの私にはカチンときました。
 ですので「じゃあお望みどおりの待機をしてやるよ」とばかりに30分ほど微動だにせずに虚空を見つめていると、向こうの方から「すまん。今回だけは俺が悪かった」と詫びを入れられました。
 今考えれば、やっぱり私のほうが悪かったような気がします。


8月16日
 ようやく休みになったので、なにはともあれ早急にインターネット接続を回復させなくてはいけません。これまでにも自分でいろいろいじってみましたがわけがわかりませんので、こんなときこそサポートセンター、略称サポセンです。
 まずは契約書の中に入っていた電話番号に電話です。
『ただいま混み合っております。順番にお繋ぎしますので、しばらくお待ちください。チャラララーンチャララー(←音楽)』
 案の定録音メッセージで待たされます。オンフックでそれを聞きつつセガサターンでゲームしながら時間を潰します。
『大変お待たせいたしました』
 30分後。ようやく受付の人が出てきました。電話で事情を説明します。
『それはルーターに異常があるかもしれません。専門のサポートセンターの電話番号をお教えしますので、お手数ですがかけなおしていただけないでしょうか?』
 言われて素直にかけなおすと『ただいま混み合っておりましてチャラララー(←音楽)』の録音メッセージがお出迎えです。
 そしてまた30分後に受付の人が出ました。事情を一通り話すと『それは契約内容が変更されたのかもしれません。こちらにおかけください』とたらい回されます。
 そちらにかけ直すとまた『ただいま混み合ってチャラララー(←音楽)』…………
 ……こうして、セガサターンのワールドアドバンスド大戦略のエンディングが流れるころ、3日後にフレッツISDNが復活するということで決着がついたのでした。
 というか、タライ回しにされすぎです。


8月17日
「ふと思ったけども、プレデターってあんまり強くないよなぁ。たぶん攻殻機動隊の草薙素子の方が強い」
 そんなとりとめのない会話をしながら、友人の仕事を手伝っていました。当初はボランティアのつもりで行っていたのですが、ご厚意でなんだか給料ももらえることに。ありがたや。
 さて、その仕事でビルの植え込みに水を撒くという作業をしたのですが、ホースを蛇口に上手くつなげません。アタッチメントで簡単につけられるところではなく、ホースを差し込んだ後に針金で縛る方法なのですが、水圧が強いせいかすぐに外れます。
 ペンチでひねってしっかりつなぎ、さてこれで大丈夫とホースを引っ張って散水し始めたところまた抜けていました。しかたがなく戻ってつなぎ直し、蛇口をひねると今度は水圧でホースの先端が大暴れ。ヤバイ、通行人にかかる!
 大慌てで走り、踊るホースの先端を押さえるとまた蛇口が外れました。
 そんなことをやっているうちに、警備室に挨拶をしに行っていた友人が戻ってきてこう言ったのです。
「なんかさ、警備員さんが監視カメラの映像見ながら大爆笑してるんだけど、なんかあった?」
 ……見られてました、か。






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