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雪の降りつづく冬の日。一人の青年が雪国の駅に降り立った。
彼はそのまま駅前のベンチに腰を下ろし、誰かを待っている。
そのまま時間が経過する。
膝の上に雪が積もるころ、青年は大きく体を震わせた。
「遅い。何やってんだ、あいつ」
呟いたそのとき、目の前で人影が足を止めた。顔をあげると、制服姿の少女が覗き込んでいた。
「雪、積もってるよ」
「そりゃ、2時間も待ってるからな」
少女の声に、青年は投げやりな口調で言葉を返した。
「……うわ、びっくり。まだ2時くらいだと思ってたよ」
「2時でも、1時間の遅刻だ」
「寒くない?」
「寒い」
「だよね。ごめんね」
少女は青年の頭に積もった雪を払った。
「七年ぶりだね。……ねぇ、わたしの名前、まだおぼえてる?」
「そういうお前だって、俺の名前おぼえてるか?」
「――祐一」
「――花子」
「うー、ちがうよぉ」
「次郎」
「わたし、女の子……」
「やばい、本当に風邪ひいちまう」
「わたしの名前……」
「そろそろ行こうか」
「名前……」
不満げに繰り返す少女。立ち上がった青年は、なんでもないかのように答える。
「――行くぞ、名雪」
「あ……うんっ」
途端に笑顔を浮かべ、青年の後をついてゆく少女。
二人は並んで、雪の中を歩き始めた。
と、いうわけでとうとう始まりました! 京アニ版Kanon!
アニメKanonは以前にも東映アニメーションが制作したことがありますが、残念ながら諸般の事情により、私は最後まで見れたもんじゃなかった 見られませんでした。
ですので、こんどのアニメには放映前からものすごい期待をしておりました。
なにしろ制作会社は京都アニメーションです。あのTVアニメ版AIRを創った会社ですので、これはもう期待するなという方が無理な話。
というわけでタイトル前のプロローグシーンです。流れとしては原作ゲームとほぼ同じなので、安心して観始められます。
背景もゲーム中のものとそっくりで、京アニ独特の色使いにも好感覚。
ゲームの象徴である雪の降り方も、一つ一つの雪がそれぞれユラユラと落ちており、無風での綿雪の感じを出しています。
ヒロインの名雪は、ゲームより目が小さく全体的に少し大人びた印象を受けます。
そして主人公の祐一ですが…………これキョンじゃないですか!
京都アニメーションがKanonの前に手がけていたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の主人公。それがキョンです。
若干成長して目が輝いている以外はキョンそっくり。声優まで同じだし!
……まあ、そんなキョン祐一と名雪の掛け合いが終わったところで、オープニングです。
「Last regrets」の歌にあわせて各ヒロインが順番に登場するオープニングは、ゲーム本来のオープニングを再現しつつも、アニメとしてきちんとした動きのあるものに仕上げてます。
Last regretsが途中で端折られすぎてて歌詞がわけわからなくなってますが、これはAIRも同じだったのでもう仕方が無いとあきらめます。
――夢。夢をみている。
原作でもおなじみのモノローグが流れたあと、祐一は目を覚ましました。
ベッドと机以外はガランとした部屋。つきっぱなしのエアコン暖房。床には加湿器。起き上がりカーテンを開けると、外は雪に覆われた町並みが広がっていました。
この、加湿器ってところがいいです。もう、北国の生活に加湿器は欠かせません。冬はとても空気が乾燥するので、肌がガサガサになってしまいます。
ちなみに加湿器の無い貧乏人は、濡らしたバスタオルを部屋に吊るすのです。
しかしできることなら、暖房はエアコンじゃないほうが良かったです。石油ファンヒーターとか、セントラルヒーティングのパネルヒーターが壁面についていれば良かった! ……などと贅沢を言ってみたり。
※セントラルヒーティング
中央集中暖房。ボイラーで熱した液体をパイプで各部屋に送り、パネルヒーターに熱水を通して暖房とする(床暖房の場合もあり)。火事や一酸化炭素中毒の心配がほとんどないというメリットが。
北海道では一般家庭でもセントラルヒーティングが設置されていたりして、ボイラー室があって屋外には数百リットルを貯蔵できる灯油タンクもある。北海道外の人にこのことを話すとよく驚かれる。
第1話 白銀の序曲(オーヴァーチュア)
(このタイトル、なんかエースコンバットっぽいなあとうっかり思った)
部屋から出ると、名雪が自分の制服を探し回っています。
「ねぇ祐一。わたしの制服、知らない?」
昨日来たばっかりの男に尋ねることじゃない気もしますが、祐一はこともなげに答えます。
「秋子さんが洗濯してたんじゃないか? たしか」
「あ!」
……原作のときは疑問に思わなかったんですが、制服って洗濯するものでしょうか? 普通はクリーニングに出すものだと思いますが。
「あったよ!」
だというのに本当に洗濯されていた制服。すごいや秋子さん。
「でも、ちょっと湿ってる……」
「名雪。コタツの中に入れておくとすぐに乾くぞ」
「そんなことしたら、シワになっちゃうよ」
洗濯機で洗ってる時点で、もうシワとか結構出来てると思うのですがどうなんでしょうか。
制服に着替えた名雪は、部活の朝練へと向かいました。
祐一は、秋子さんと一緒に家の前の雪かきです。
「大変でしょう? 疲れたら休んで下さっていいですよ」
「なあに、平気ですよ」
「男の子が来てくれて助かるわ」
積もった雪に、角型スコップでサイコロ状に切れ目を入れて持ち上げ、道の端まで運んでゆきます。北海道生まれの私などは、この除雪シーン見ただけで「実家に帰りたい」という衝動に襲われてもう大変。
ここでモノローグがはいり、秋子さんが祐一の叔母(伯母かもしれませんが)であり、名雪はその娘であると紹介されます。祐一は子供のころからよく遊びに来ており、名雪や秋子さんとは7年ぶりの再会となるわけです。
よく考えると名雪の紹介が秋子さんより後になってます。祐一ひどい。
「お……もうあんなところまで!」
祐一がぼんやり考え事をしているうちに、秋子さんは家の前どころか道の遥か向こうまで除雪を完了させてます。あきらかに男の子の助けがいりません。
「疲れた……」
秋子さんの半分も働いていないのに疲れ果てて居間でお茶飲んでる祐一。とはいえ雪かきは、慣れていないとなかなか大変なものがあります。
「ただいまー」
そうしていると、名雪が帰ってきました。
「さあ祐一、街を案内するよー」
そう言って名雪は満面の笑みで両手を差し伸べました。シャラララーン、なんて効果音までつけて。
祐一はそれを見て半ば呆然。「お前って、全然変わってないな」とか言い訳してましたが、たぶんいきなり好感度MAXな振る舞いをされて度肝を抜かれたに違いありません。
二人は川沿いの雪道を歩きます。ゲームでもお馴染みの通学路です。
「わざわざ悪いな。帰ったばかりなのに」
「はやく街に慣れてもらわないと。祐一はこれからずーっとこっちで暮らすんだもん。ずっと、ずっとね」
……えー。なんと言いますか……名雪さん、なんか怖いです。
「ずっと、ずっとね」のところで名雪の目のアップになる演出も怖いです。
たぶん祐一もそれを感じたのか「ずっとかどうかははわからないけど、少なくとも高校を卒業するまではこの街で暮らすことになるな」などと訂正してます。
Kanonのアニメ観る前まで「ひぐらしのなく頃に」のアニメを観ていたせいか、こういうセリフや演出があると「後の惨劇の伏線か!?」と身構えてしまいます。考えすぎだ私。
その後、街の案内の演出です。
歩道と車道の間にある雪の山脈。
(除雪車が車道の雪を脇に除けるために出来ます)
そこにカラースプレーで書かれた、レッカー移動の注意書き。
(アスファルトが露出してないのでチョークは使えません)
滑り止め用の砂袋スタンド。
(車が坂道を登れなくなったときなどに使います)
個人所有の除雪機。
(ガソリンで動く、手押しの小型除雪車みたいなものです)
京アニの北国ロケハンの成果が光ります。
そうしているうちに学校に着きました。
「私達の学校だよ」
「このあたりって、前は麦畑だったか?」
「うん。こっちは新校舎。あっちが旧校舎」
「明日からは、俺もここの生徒か」
さりげなく伏線をはっている祐一。
第一話でヒロインを全部出す演出なのか、離れたところで舞と佐祐理さんが登場しますが、祐一は気付かず行ってしまいます。
「あれが病院。って、昔からあったよね」
名雪も病院を指しながら、さりげなく伏線を……
……あれ、この病院。なんか見たことあるような……って!
中村記念病院じゃないですか!
札幌市中央区にある、特徴的な形をした病院です。私の祖父もここに入院していました(←どうでもいいこと)。
ということは、京アニKanonのロケハン地は札幌!?
気付いた瞬間思わず「ちょwwwこれwwwwww」とか叫んでました。そういう言葉遣いがあまり好きじゃないはずの私にしてはとんだ不覚です。祐一達がさりげなく栞とすれ違っているのも見逃していました(2回目の視聴で初めて気付く)。
そうしているうちに夕方。
「このあたりも、ずいぶんにぎやかになったな」
車通りの多い交差点で祐一が呟きます。
……ここの交差点も見たことあります。たしか、札幌市中央区の大通に近い場所。西八丁目くらいでしょうか?(ローカルネタ)
その交差点で香里と北川に出会います。
「珍しいな、水瀬もデートか?」と言う北川に「も、ってなによ。あたしたちは偶然会っただけでしょ」とヒジ鉄を食らわせる香里。
あれ、この二人って、こんなんでしたっけ? なんかKanonのアンソロとかSSの影響でそういうイメージがありましたが、原作ではこんなに夫婦漫才じゃなかったような気もしますが。
軽く会話を交わし、缶コーヒーなども貰って香里&北川と別れます。ここでCM。アイキャッチがないのはAIRと同じです、
CM終わって、雪の積もった丘の上。祐一と名雪は街並みを見下ろしています。しかしこの街並みも、なんか札幌っぽく見えて仕方がありません。
「この丘は変わってないでしょ?」
「いや、あんまり覚えていないんだ。昔のこと」
「きっと、少しずつ思い出していくよ。いろんなことも」
そんな会話を交わす二人の背後に、一匹の子狐が現れました。
「あー、キツネさん! おいでー、キツネさーん」
名雪はもう糸目になってふらふらとキツネに近づいていきます。
「よせよ、噛まれるぞ」
祐一が止めます。
祐一が北海道民じゃなくてよかったです。道民だったらここのセリフは 「よせよ、エキノコックスになるぞ!」です。
ひどい話のような気もしますが、小学校の時点でエキノコックスの恐怖を教えられるんですよ北海道。
丘から降りて街に戻った二人。名雪はスーパーに晩御飯の買い物に行きます。
だというのに祐一は入り口で待ってるとか言い始めます。
「俺はここで待ってる。中に入ったら迷いそうだ」
いかに初めての場所とはいえ、子供じゃあるまいしスーパーで迷うはずなどないと思います。きっと買い物に付き合うのが嫌なんです。ひどいや祐一。
「じゃ、そこにいてね。勝手にどっか行っちゃダメだよ」
「大丈夫だ。ここでじっとしてる」
そう約束して、名雪はスーパーの中へと入りました。
言われたとおり黙って立っている祐一。
と、そこに
「そこの人! どいて、どいてー!」
ダッフルコートに羽根付きバッグの少女、あゆ登場です。いきなり祐一に頭からタックルをかましてきました。
アニメで観た感じだと、道には避けて通るだけの広さが十分にありました。これはもう、わざととしか思えません。
「うぐぅ、いたいよ」
「悪い悪い、あんまり高速だったんで避けられなかった」
「うぐぅ。……とりあえず、話はあと!」
なぜか祐一の手を引っ張って、近くの喫茶店に駆け込みます。
「ここまでくれば、大丈夫だね」
「大丈夫もなにも、事情がわからん」
「追われてるんだよ、ボク。ボクと一緒にいたところを見られたから、キミも危ないよ」
真顔でひどいことを語るうぐぅ。
喫茶店内にはBGMとしてパッフェルベルのカノンが流れています。芸が細かいです。
外を見て、あわてて隠れるあゆ。ですが、追いかけてきたのはただのタイヤキ屋のオヤジです。
話を聞くと、あゆは露店でタイヤキを買ったのですが、サイフがないことに気付きました。その時ネコがタイヤキを漁ろうとしたためオヤジが怒鳴り、びっくりして逃げ出したそうです。
「どう聞いても悪いのはお前だ」
「うぐぅー。明日ちゃんとお金払うもん」
「明日じゃ遅い! 俺が金出してやるから、いますぐ謝りに行くんだ」
祐一はあゆを引きずって連れてゆき、タイヤキ屋へ謝りに行きました。
Kanonという作品の中でも最大の問題点、あゆの食い逃げ行為がアニメでは未遂で終わってます。しかもなんかネコのせいにされてますし。
やっぱり子供の教育に悪いからでしょうか? 子供はこんな深夜アニメは見ないと思いますが。このKanonを放送しているBS−iのキャッチコピーは「大人になったらBS−i」ですし。
きちんとタイヤキ屋に謝り、タイヤキも食べ終わって、祐一はあゆと別れます。
「それじゃ、この辺でさよならだね」
「そうだな。……本当にちゃんと金返せよ」
「ボクは月宮あゆ。キミは?」
話ごまかしてるよ! まったくもうこのうぐぅは。
「相沢祐一」
「え……ゆういち……くん?」
「どうした?」
「ううん。なんでもないよ。それじゃ、また会おうね。約束、だよ」
なにやら因縁がありそうな演出で、二人は別れました。
「いけね!」
まあ当然、祐一はすっかり名雪のことを忘れていました。
慌てて戻ると、スーパー前のベンチでこの世の終わりのような顔をして座り込んでいる名雪。
「……うそつき」
30分も待たされた名雪はめちゃくちゃスネてました。
必死で謝る祐一。名雪もそれを見てやっと「昨日は私が待たせたんだからおあいこだね」と許してくれます。
名雪は吹雪の中2時間も待たせた挙句に大して謝りもしなかったじゃん! ……などとは言ってはいけません。男を待たせるのと女を待たせるのは重みが違うのです。たぶん。
家に戻って夜。祐一の引越しの荷物が届きました。しかしもう遅い時間なので、開梱するのは明日以降です。
明日は学校と言うことで、祐一は名雪に目覚まし時計を借りることにしました。名雪の保有する膨大な数の目覚ましの中から、ネコがついたファンシーな目覚ましを借りる祐一。
そのまま祐一はベッドに横たわり、眠りにつきました。
祐一は夢を見ていました。
子供の頃の夢です。同じく子供の名雪と一緒に買い物に行きます。
スーパーに入る名雪に向かって「中に入ったら迷いそうだから」と入り口で待つ子供祐一、今度はたしかに子供ですが、全然成長してないです祐一。
入り口でまつ祐一に、突然ぶつかってくる女の子。それはさらに幼いあゆでした。
と、ここまでで第1話は終わり。
エンディングテーマは原作と同じく「風の辿り着く場所」。音楽のリズムにあわせて、あゆが元気よく雪原を駆けてゆく心地よいアニメーションです。
そんなわけで第1話の感想のまとめですが、
「素晴らしい」
の一言。期待していた価値は十分ありました。
とくに背景が札幌だったときには、もう嬉しくて部屋中駆け回ってたりしました。夜中だっていうのに迷惑な。しかも札幌出身者限定のメリットですし……。
Kanonは2クールあるらしいので、これから半年は週末の楽しみができました。
次回。「第2話 風の中の入祭唱(イントロイト)」
入祭唱なんて単語、初耳です。なんでもキリスト教のミサの「式次第」みたいなものだとか。
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