九州急襲
2004/02/01





 私ことえぬじぃは、生まれも育ちも北海道札幌市です。この世に生を受けてから23年間、何度か引っ越しをしつつも札幌市南区から出たことは一度もありません。

 そんな私ですが、2003年にして九州は鹿児島に引っ越しました。
 ……なんで?

 いや、まったくもって、今冷静になって考え直すと暴挙としか思えない決定ですが、考えた当時はさほど悪くないと思ったのですよ。
 専門学校を卒業した私ですが、やはり将来のことを見据えれば大卒の方がいい。しかし今頃いちから大学入学なんて時間がかかりすぎます。
 しかしウチの専門学校は鹿児島に大学を持っている。
(正確には鹿児島の大学が札幌に専門学校を持っているんですが)
 そこならば編入ということで、2年間で大卒資格がもらえる。そのうえ、教職課程も用意されていて教員資格を取ることも可能。これはいい!

 なかなか悪くない進路設定です。けっして、就職活動を一本に絞って(しかもNHK)落ちたからではないのです。



 ――――これが、すべてのはじまりでした。




 4月上旬。すでに大学への編入手続きも済ませてあとは実地へと向かうだけになっていました。
 札幌から鹿児島までは航空機で直行便があります。後に羽田乗換えの方が安いということが判明するのですが、それを知らなかった当時はもちろん直行便で行きました。



ANA 千歳−鹿児島 ボーイング737−500

外観
http://www.air-nippon.co.jp/ank/fleet/main.html

座席図
http://www.air-nippon.co.jp/ank/fleet/seat.html



 なんかやたら小さい!

 今までに飛行機は10回以上乗りましたが、どれもボーイング767系でしたのでこれの倍の大きさがありました。あまりの小ささに慣れている飛行機への不安が増してゆくのが感じられます。
 そのくせ飛行距離は札幌から鹿児島とほぼ日本縦断。
 途中で燃料が切れたりしないか心配です(こういうのを杞憂と言います)。

 ……まあ、こんな小さな飛行機ならば心配すべきなのは飛行中の揺れと乗り物酔いですが、私にはそのための秘策があります。それは、前日徹夜して搭乗中は寝るというものです。
 飛行機ならば寝過ごして知らないところに連れて行かれる危険性もありません。バス・電車では時折ありましたが。


 鹿児島へと到着。4月では札幌と鹿児島の気温は10度近く違います。ですがそれほど違和感はありません。北海道は室内が暖かいので、鹿児島は室外も室内だと思えばまったく問題がないということでしょうか。
 しばらくバスで揺られて、鹿児島での住まいである学生寮に到着です。

男子学生寮なのに、バラの庭園がありウテナ気分。



 なかなかいいところです。それでは、私に割り当てられた部屋は……と。



鋼鉄製のドア。閉めるとけっこうな音がする


 非常……口?

 部屋兼非常口?

 するってぇと、火災とかなにかが起きた場合は、この階の人間がみんな私の部屋に乱入してくるわけですか。……イヤすぎる。

(後に、この非常口ステッカーは前の住人が貼ったイタズラだと判明しましたが)


 さて、大学が始まるまで5日くらいの猶予があります。まあその間は荷物をまとめつつ、鹿児島の気候に慣れておきましょう。

1日目。荷物を整理しながら終わり。
2日目。周囲を探索しつつ終わり。
3日目。パソコンをいじりつつ終わり。
4日目。…………


 なんだ……、なんだ……?
 この、胸の軋むような、奈落に吸い込まれるような、そんな感覚は……。
 これは、もしかして……私は淋しいと感じている!?

 よく考えてみると、3日間も他人と話さず、見知った人の顔も見ていないという状況は生まれて初めてです。
 ふ、この私がな……齢23にして初めて淋しさという感情を知るとは。

 こ、この淋しさを紛らわす物……物とは……


ずばり、酒と女











酒(黒糖焼酎「れんと」)と女(電撃G'sマガジン))



「ひゃーはっははは!! 春歌の腰がやけに太いなあ、この号は!」


 淋しい男は、いつもここへと逃げ込みます。……なにかが違うような気もしますが



 さて、大学が始まりました。まずは新入生ともどもオリエンテーションを受けます。担当講師から大学生活についての説明を聞くのです。
 まあ、私は単位制をとっていた高校を出たので、大学といってもそれほど目新しいシステムではありません。ですので話も要点だけを拾いながら適当に聞き流しています。

「あー、それと。この街は指定暴力団小桜一家と山口組が過去何度かの抗争を繰り広げており……


 …………えっ?



「また、県下最大の暴走族や、大学生を狙った土着チンピラなどが根を張っています



 …………せんせいが、なにか、いってる。



「ですので、安全のために夜11時以降の外出はなるべく控えてください



 戒厳令下にあるようです。




 なんというか……大学のオリエンテーションで話すことでしょうか? どうもとんでもないところに来てしまった気がしてなりません。


 考えるだに怖いので考えるのをやめました。



 ――さて、次に時間割を作るのですが、私は編入生なので2年間で卒業するのを目処に組み立てなくてはいけません。
 ですので、1年の取得単位数が新入生よりはるかに多いです。
 具体的に言うと、月曜から木曜までは朝9時から夕方5時半までビッシリと講義。金曜日も10時半から4時まであります。週休二日なのだけが救いなのです。
 そんな事実にちょっと暗い気持ちを抱きつつ、時間割を組み立てていると……

 ……あれ?

 ふと気がついたのですが、同じ時間に必修科目が重なっているところがあります。必修だから必ず取らなくてはいけません。おそらく片方を1年目に取って、もう片方を2年目に取るのでしょう。
 では、この3つ重なっているところはどうすればいいのでしょうか

 進路指導担任の先生に聞いてみました。

「あー、来年も同じ時間割とは限らないから、運がよければ取れるよ

 ということは、運が悪いだけで強制的に留年?

 あまりに不安になったので、私はついこう尋ねました。

「あの……ですね。今までの編入生で、2年間で卒業できた人っているんですか?

 それに対しての先生の返答。

「あー、っと。……ちょっと待ってや、確かいたはずなんだが……」


 おぼろげな記憶になるほど少ないのっ!?





 なにか私は、取り返しのつかない間違いをしたような。
 そんな気分に襲われてなりません。







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