悪徳商法との対決
2002/04/13





 このまえテレビで悪徳商法の被害体験談の特集がやっていました。で、実は私も一度、その手のものと関わったことがあります。名称は挙げませんが、けっこう大手でスポーツの協賛などをよくしているところです。



 ――それは一本の電話から始まりました。綺麗な声をした若い女性からの電話です。これでまず第一印象を良くしようという作戦でしょう。単純ですが効果的です。まあ私の場合は最初から名前を間違えられたので第一印象は悪かったです。
 ……私の本名の名前は、普通ならまず正しく読めない漢字ですので、無理もありませんが。

 で、そのお姉さんの言うには、きわめて安い値段で海外旅行ができたり、スポーツジムに入会できたり、英会話が習えたりできるサービスがあるそうです。そのご紹介と説明をしたいので、オフィスの方まできていただけないか?というものでした。
 怪しいです。悪徳商法の匂いで満ち溢れています。今なら絶対に行かないでしょう。ですがまあ、そのときは話だけでも聞いてやろう。悪徳商法だったら論破してやろう。そう考えて承諾しました。
 若かったんですよ、あのころは……。


 札幌駅の近くにあるオフィスに来ました。いちおうキチンとした看板を掲げています。ここまでならばOKです。
 電話勧誘されたときと同一の女性に案内されてオフィスに入りましたが、あちらこちらに観葉植物が置かれていて、BGMとして小音量でユーロビートが流されています。なんか普通で拍子抜けです。名刺を渡されましたが、実に普通のことが書かれています。つまらないです。


 そして説明が始まりました。まず最初にウチの会社は怪しくないということを強調してます。さまざまな資料を駆使して、自分の会社の正当性をアピールしていました。20分くらい

 本当にまっとうな企業ならそんなに力説しません

 そんな疑惑を膨らますだけの会社紹介が終わったあとに、いよいよ「安くなるサービス」(正式名称忘れました)の紹介です。

 彼女がいうには、企業が常に欲しているのは消費者の意見だそうです。消費者が何を求めているか?現在の商品についての不満はないか?それを理解していないと売り上げは伸ばせません。ですのでアンケートなどで常に消費者の意見を求めているのですが、効果的にするにはコストが跳ね上がります。そこでこの会社が出てきます。そのような意見を求めている企業と消費者の仲介をして、企業の商品・サービスを割引で利用させるかわりに、義務的にアンケートを取る。

 以上が「安くなるサービス」の仕組みです。まあパッと聞いたところでは、理にかなっています。

次に安くなる商品・サービスの一覧の紹介と説明です。これが多種多様で2時間近く説明されました。あまりにも長かったので、次の予定に入っていたPC教室の時間が来てしまったので、事情を話してまた次回に説明してくれるように頼みました。すると彼女は、なぜか意表をつかれたかのような顔をしました。
どうやら長い説明で疲れさせて判断力を奪う作戦だと見ました。大失敗です。
 さすがにこちらを引き留めることはできないとみて、次に会う約束をしてその日は帰りました。


 さて、次に会う日になりました。たっぷり休んで判断力は完全に回復しています。
 説明の続きをしてもらいます。前回の2時間に続いて30分間説明されました。合計すれば2時間半です。連続していたら、さぞや判断力が低下したんでしょう。
 惜しかったですね。

 とりあえずひととおりの説明を受けました。そこで思うことが、値引きの率が高すぎるということです。多くが半額以下になっており、ものによっては4分の1になっているものもあります。普通は仕入れや諸経費を考えると、そんなに値引いたら原価さえ回収できません。
 でも、それでも値引きがある場合というのは、たいていタダでもいいから持って行ってほしいくらいの不人気商品なのです。あるいは定価がボッタクリか。


 説明が終わりましたので、彼女はニコニコ顔で契約書を出してきました。そして手数料や諸経費を説明してきました。その金額はというと……


 総額約70万円也。


 70万円です。70万円。彼女はローンを薦めてきましたが、月1万6千円で4年近くあります。正気の沙汰じゃありません。高いだろうなぁ、とは予想していましたがここまでとは。さすがに度胆を抜かれました。
 大慌てで高額なことを抗議すると、なれた調子で彼女は説得してきました。

「たしかに高いかもしれません。でも、英会話やスポーツジム、海外旅行にならばそのくらいの金額はかかりますでしょう?契約をするだけでそれらが全て値引きになるのです。最終的には安くなりますでしょう?」

 それに私も反論します

「でも、英会話もスポーツジムも海外旅行もしたことないし、これからもほとんどしないでしょう。最終的には損ですよ」

「……なんで損得勘定で物事を考えるんですか?」

 最初に損得持ち出したのはあなたでしょう。

 その後、激しい説得が続きます。彼女曰く、絶対得だ、これを機会に始めよう。なんでこんないい話を断るのかわからない、あなた正しい判断ができていないんじゃないですか?

 説得するのに相手をバカ呼ばわりとはいい度胸です。すっかり腹をたてたので
「私はバカですので、あなたもバカに関わっていると時間を無駄にしますよ」
 と逆説得を行いました。
 また彼女は意表をつかれた顔をしていました。まさか説得しようとしている相手から説得されかえすとは思っていなかったのでしょう。
 それもバカな理屈で。

 彼女は席を外して、奥の部屋に入ってなにやら相談をし始めました。さすがに自分では手に負えないと判断したようです。
 それを見て一瞬危機感を覚えました。だって、怖いお兄さんとか出てきそうじゃないですか。……まあその時は本格的に精神異常を演じるだけです。
 この狂ったフリというのは、対人関係にて窮地に陥ったときにはきわめて有効に働きます。たいてい相手から怖がって離れていってくれます。オススメです。
 ただ
とりかえしがつかないという副作用
がありますが。

 彼女はしばらく話し合った後、こちらに戻ってきて「わかりました。もうお帰りになってけっこうです」といってきました。どうやら会社でももう手に負えないと判断されたようです。

 でも帰るときに一言。

「この前に渡した名刺を返してください」

 なんで?なぜ?わけがわかりません。というか持ってきていません。今回は持ってきていないので、こんど返しに来るといったら

 「もう来なくていいです。でも名刺は絶対に捨ててください」

 ……なんですかね?呪われそうだとでも思ったんでしょうか?わけのわからないお願いです。しかたがないので心のなかで名刺を永久保存する決意を固めました。もちろん今もあります




 で、最後にみなさんに悪徳商法への心構えを

1、 怪しいと思ったら近寄らない。同情や好奇心は禁物

2、 被害にあってしまったら、警察や弁護士にためらわずに連絡。また、それを盾に契約を断る。

3、 最後の手段は精神異常







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