あるとき、私の通っている学校でルスツリゾートに遊びに行くと言う企画がありました。
で、私はすっかり寝過して行けませんでした。(←大馬鹿者)
なんかもう大変腹が立ちます。自業自得ならばなおさらです。そこで腹立ち紛れに友人の雷光さんに電話をかけました。いい迷惑です。
えぬじぃ「もしもし。雷光殿は今日はヒマですかな?」
雷光「ん〜、一応」
えぬじぃ「じゃあ出かけよう。地球岬に!!」
雷光「地球岬は日帰りじゃ無理だろう……」
えぬじぃ「じゃあ夕張」
雷光「まあ、そこくらいならね。他に誰か誘う?」
えぬじぃ「ゆっけさんは今日ダメでしょ?ヌマさんを誘ってみようか?」
雷光「だね。ヌマさんなら用事はエロゲーやることぐらいだし」
なにげに酷いことを言ってる雷光殿。ともあれ電話をすると、ヌマさんやけに乗り気で同行することとなりました。
と、いうわけで急遽私と雷光さんとヌマさんによる夕張日帰り旅行が決定です。そうと決まったら行動が早い。雷光殿の愛車カリーナEDで30分後にはもう出発しました。
旅と言えば音楽が付き物です。ですが雷光殿の愛車はCDプレーヤーが壊れているので、私がCDラジカセを持ち込みました。
えぬじぃ「雷光殿はなにかCD持ってきた?」
雷光「ん〜、とりあえずZARDと相川七瀬。あとMAXもある」
えぬじぃ「おお!素晴らしい。もはや我々に敵はいないぞ!」
なんだかよくわからん表現ですが、ともあれ演奏開始です。相川七瀬の声が車内に響き渡ります。
ヌマ「なんかちょっとボリューム大きすぎないか?」
えぬじぃ「そう?こんなものじゃない」
『ガコッ!』(車がマンホールで跳ねた音)
『プッ』(CDが音飛びした音)
雷光「……おい。ちょっとまて。まさか」
そのまさかでした。車がちょっとした段差で跳ねるたびにCDが音飛びするのです。
ちょっと演奏したかと思えばプツ。もちょっと演奏したかと思ったらブツ。
あれほど聞いていて腹立たしい音楽はありません。好きならなおさらです。
ヌマ「むうう、なんとかしろー!!」
えぬじぃ「なんとかって……そうだ!この手はどうだろう」
ラジカセを手に持って宙に浮かべます。こうしてると車が跳ねても、ラジカセはわずかにしか動きません。当然音飛びはまったくありません。
えぬじぃ「見たか、これぞ名付けて手動懸吊装置!地震計と同じ原理です!」
雷光「じゃ、ずっとそのまま持っててね」
えぬじぃ「……それは嫌ぁ」
結局、改良案としてラジカセを膝の上に置くことにしました。
なぜ旅の間中、私がラジカセに膝枕をしてあげなくてはいけないのでしょうか?貧弱なラジカセにわずかに怒りを覚えた一瞬です。
道中、運転席からのショット
車は進み、野幌を抜けました。ここの道の駅で休憩です。
えぬじぃ「なんと、魔王の丘公園!?」
雷光「……マオイの丘だってば」
なんか野菜市だかなんかがやっていて、非常に混んでいます。大して見るものもなかったので10分ほどで撤退しました。
そうして車を走らせること1時間。ようやく夕張に到着です。
ここからが夕張。……とりあえず森
えぬじぃ「おお、ここが夕張市!!炭鉱が閉山したらなんの価値も無くなった夕張!!人がいないのに道路は妙に立派な……」
ヌマ「やめんか(絞める)」
なにやら夕張市民を敵に回す発言をした男は、無事沈黙しました。
まあ、というわけで夕張です。
雷光「んで、どこに行く?」
ヌマ「ふうむ。石炭の歴史村に行くか?」
えぬじぃ「ん〜、そんなありきたりなのもつまらない。とりあえず市内を流していこう」
市内をトロトロと走っています。不思議なくらい人がいません。なのにパトカーとは良く出会います。ここは警察都市なのでしょうか?
道を走っていると「暴力追放宣言」の看板が。
雷光「こんな人のいない街に暴力なんてあるのかねぇ」
えぬじぃ「ヒグマだ!ヒグマが夜な夜な暴力を……」
あいもかわらず夕張市民敵対運動を続けている馬鹿者が一名。なんだか街の人の眼つきもちょっと恐いです(たぶん気のせい)。
そのとき、えぬじぃの目にふと入った看板。
えぬじぃ「おお、『石切神社』だ!」
雷光「知ってるの?じゃあココに行ってみるか」
なんの意味もなく衝動的に夕張石切神社への参拝が決定しました。途中で一時間300円の駐車場に車をとめます。ですが、人がまったくいません。そのうえ料金徴収機のようなものも見当たりません。
「きっと募金箱みたいな木箱のなかにお金を入れるんだよ」ということにして、勝手に駐車していきました。
さて、まずは石切神社の前に商店街を通ります。するとそこには映画の看板があちこちに張られています!そういえば夕張は石炭とメロンのほかにも、映画が盛んでした。
ヌマ「おお、チャップリンの黄金狂時代!」
えぬじぃ「史上最大の作戦が!」
雷光「太平洋ひとりぼっちもあるね……」
道々に掲げられた看板を眺めながら歩いていると、雷光殿が「ちょっとアレみてよ。面白い」と指差します。そこには……
チャームショップ
えぬじぃ「チャームショップ!!素晴らしいネーミングセンス!!」
雷光「しかもチャームショップなのに、墓石も扱ってる」
えぬじぃ「局番がヒトケタだ!楽しすぎ!これは魅了された!」
ひとしきり楽しんだところで(ごめんなさい)、一軒のおもちゃ屋さんに入ってみました。「なんか寂れていて、掘り出し物がありそう」という単純な理由でしたが……。
なかに入った我々を圧倒した玩具。それはトミカのミニカー!!
雷光殿が異常に喜んでいます。「おお!GTRだ!」「パ、パトカー仕様だと!?」「というか、オール398円!!」
喜んでいます。もし尻尾があったらちぎれんばかりに振っていたでしょう。
ミニカ−。けっこう安い
散々騒いだ末に、「三菱ランサーエボリューションW WRCタイプ」と「トヨタ RAV4」を買っていきました。
ちなみに雷光殿は「店のラベルでRAV4がAV4になってた」と、少しショックそうな顔をしていました。……なんだかかなりどうでもいい気がしますが。
まあ、そんなこんなで夕張石切神社に到着です。
――ですがなぜここも人がいないのでしょうか?雷光殿が「巫女さんいない〜」などと泣いております。
こんな邪悪な人間が神域に入っていいのでしょうか?
神社特有の異常に長い石段を登っていきますと、ちょうど石段の最上段にビール片手に座っているお爺さんがいました。
お爺さん「おお、あんたがた。どこからきた?」
雷光「えっと、札幌からです」
お爺さん「そうか、札幌からか。……若い者は一気に石段を登れていいのぉ」
そういってまたビール(サッポロ黒ラベル)をあおります。とりあえずその場は別れてさらに奥の参拝所に進みます。
長い石段。見晴らしは最高
えぬじぃ「きっとさっきのお爺さんが神主さんなんだよ」
雷光「……昼間から飲んだくれてたぞ?」
えぬじぃ「ありがち、ありがち」
というわけで参拝所です。撮影禁止とは書いていませんでしたが「ここはやめたほうがいいだろう」と3人の意見が一致して写真は撮らないことにしました。
3人でお参り。あまりに静かな参拝所。遠くに見えるお社。なんだか敬虔な気分になっています。
――と、突然ヌマさんがうずくまりました。
えぬじぃ「どうした?ヌマさん」
ヌマ「……す、すまん。ビニ袋くれぇ」
もしや、よもや、まさか、と思ったら予想通り。
吐いています。
ありがたいことに無事に雷光殿からもらったビニール袋の中に吐いています。ですが、なんで吐く?
雷光「だ、大丈夫か?ヌマさん?」
ヌマ「……まあ、吐いたら気分は良くなった」
えぬじぃ「神の気にあてられたのかなぁ」
とりあえず、ヌマさんを休ませようという理由で(同時に吐瀉物の詰まった袋を捨てようと)近くのホテルの喫茶店に入りました。
トイレで口をゆすいで(同時にお土産を捨てて)きたヌマさんが、妙にさっぱりとした顔で帰ってきます。
……まあ、無事ならいいんですけどね。ここでメロンシャーベットとメロンアイスクリームを食べました。さすがに本場だけあって素晴らしい味です。
直前にあんなことがなければ、もっと美味しかったんでしょうけどね。
さて、いい時間になったので、そろそろ帰路につきます。駐車場は、料金箱が最後まで見つからなかったので出世払いにしました。
雷光殿が「帰りのルートは支笏湖沿いで行こう。同じ道じゃつまらんでしょ?」と言ったため、少々遠回りですが支笏湖を見ながら帰ることになります。
ヌマさんが助手席に座り、ロードマップを見ながらナビゲーションします。
ヌマ「次を右ね」
雷光「うい」
ヌマ「そしてそのまま真っ直ぐ」
雷光「うい」
ヌマ「そしたらね……」
雷光「そしたら?」
ヌマ「えー……と」
雷光「おい、なんか聞き覚えの無い市街地に入ってるぞ!?次はどっちだ!」
ヌマ「ええい、もうどっちでもいいから曲がれ!!」
……本当に無事に着くのでしょうか?不安でいっぱいになってしまいそうなところですが、私は車で居眠りしやすいという能力が発動してスヤスヤと眠っていました。
目が覚めるとそこは千歳市でした。
えぬじぃ「あー、よく寝た……っと、千歳か」
ヌマ「そうだ。一人でスヤスヤ寝おって」
えぬじぃ「あ、あの看板面白い」
雷光「ん?」
戦車に注意
さすがは千歳市です。なにがさすがなのかさっぱりわかりませんが。
で、ちょうど夕方頃に支笏湖に到着しました。
雷光「ちょっと止まってくよ〜」
えぬじぃ「なんで?」
雷光「こんないい景色を見ないのもなんでしょう?」
最後のショット
たしかに、言ったとおりいい景色です。
雷光「この景色を見ただけでも来た甲斐があったなぁ」
あの、それ言ったら 今日の夕張の立場はどうなるの?
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