人にはなんか気分の悪い時というのがありますよね?
そんなとき、つい他人にも悪いことをしがちです。
悲しいことに、世にはびこる犯罪の中にそのようなものがたくさんあります。
「ついカッとなって殺してしまった」
「ムシャクシャしていたんで、火をつけてしまった」
これらはとても悲しいことです。ですが、どんな人間でも起こしかねないことだとも言えます。
そう……私にも。
あれはエクセル3級検定を受験した時のことでした。
「この受験に失敗したら腹を切る! カッターで薄く1ミリぐらい!!」
そう宣言するほど私はこの受験に自信を持っており、試験開始前に試験官にワイロとして、えぬじぃ直筆の戦車の絵をわたすほどでした(とても困った顔をしていました、逆効果)。
――さて、無事にエクセル試験時間が終わり、あとは制作した表を印刷をするだけになりました。ンガンガーと仕事をこなすプリンターの前で、私は余裕で足など組んでおりました。最悪の受験態度です。
それほど自信があったのですが……プリントアウトされた表をみて真っ青になりました。
そう、印刷に失敗していたのです。
検定の勉強をしたときに、紙とインクをケチって印刷練習を怠ったツケが今になって回ってきたのです!
なんということでしょう。思わず涙がこぼれそうになりました。
一見余裕たっぷりに振舞って、鼻歌でニュルンベルクのマイスタージンガーなんか歌いながら(←ブギーポップかお前は)、心の中では泣いておりました。
ほかの受験者が帰り、あるいは次の受験に行っても、私は一人残って鼻歌を歌いながら戦車の絵を描いていました。もうヤケです。
――うう、おのれぃ。なぜに私がこんなことに
不幸な災難の被害者が必ず思うことを、私も心でリフレインしていました。
ふと、そのとき目の前のパソコンに目が止まりました。そこにはスクリーンセイバーが美しく起動していました。
(……こうなったら、このPCにイタズラをしてやる!)
私は暗い心でそう決めました。もはや誰かに被害を与えなければ気が済まなかったのです。なんだかキレる17歳の気持ちがちょっとわかりました。
そのイタズラとは……ウィンドウズに最初からついてきているスクリーンセイバーには「伝言板」というものがあります。それは設定した文章を電光掲示板のごとくスクロールさせて表示するというものでした。
そうです。私はそこにイヤな文章を設定したのです。
それは、ドイツ帝国参謀総長一覧
ズラズラとヴァイス中将からヒンデンブルク元帥まで表示される参謀総長。きっとこれを見た人はとてもイヤな気分になること間違いありません。
私は作業を終えると、とてもすがすがしい気分になって、受験会場を出たのでした。
ですが、これで終わることはありません。
『天網恢恢疎にして漏らさず』(てんもうかいかいそにしてもらさず)ということわざがあります。
「天(神)の網は粗雑なように見えるが、けして漏らすことはない」
すなわち悪事・悪人は絶対に見逃されることはない、という意味です。
そのとおりに、私にも報いがやってまいりました。
さて、そのエクセル3級試験の会場というのは、某PC教室でした。
その教室には私だけではなく、私の母も通っていたのです。
私の母がある日、パソコンの授業で先生から説明を受けているとき、しばらく操作されなかったパソコンは自動的にスクリーンセイバーを起動させました。
ふと母がその画面を見ると、そこにはズラリと表示されるドイツ帝国参謀総長一覧が!!
……母と教室の先生は、それをしばらく黙って見つめていました。そして、お互いに一致した意見をだしました。
「こんなバカなことをするのは1人だけだ!」
――天網恢恢疎にして漏らさず。
みなさんも自分の気分が悪いからといって人に迷惑をかけるのはやめましょう。
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