アンパンマンの真意
2001/05/30





 「それいけ!アンパンマン」というアニメがあります。
 作詞家であり絵本作家でもある、やなせたかし原作の有名なアニメです。
 一見、子供向けの楽しいアニメですが、実はこれには深い意味が隠されているのではないでしょうか?
 今回はそのことを探っていこうと思います。





 私が子供のころ、ちょうどアンパンマンの放映が始まったころに、アンパンマンマーチ(オープニングの歌)が流行ったんですよ。
 何度もアンパンマンマーチを歌っているうちに、ふと歌詞に疑問がわいた部分がありました。
 それはここです。


そうだ、おそれないで みんなのために
 愛と勇気だけが友達さ



 ……誰もが1度はこの部分に疑問を持たなかったでしょうか?
 愛と勇気だけが友達さ。普通なら
「他に友達いないんかいっ!!」
 と、軽くツッコミを入れて笑い飛ばすだけのことでしょう。

 ですが、良く考えて見て下さい。
 愛と勇気……美しくも形が無く、ハッキリとつかみがたい概念です。
 そしてこれは誰かに(あるいは自分に)言い聞かせる口調です。
 これは深い意味があるのではないでしょうか?


 また、その前の文である「そうだ、おそれないで みんなのために」という箇所。
 これは何を「おそれるな」と言っているのでしょうか?単純にバイキンマンだとは言えないような気がします。
 これにも、深い意味があるのではないでしょうか?





 さて、ここでアンパンマンのお話の内容を考えてみましょう。
 基本的な流れは


「バイキンマンが悪さをする」

「それによって誰かが困る」

「アンパンマン登場。バイキンマンと戦う」

「バイキンマンが負けて逃げ帰る。誰かは無事に助けられる」


 というものです。
 前後にいろいろな話が入りますが、基本はこれです。


 ここで考えなくてはいけないのは、バイキンマンが悪さをするのは

自分のため

ということです。
 自分の欲望(嗜虐心?)を満たす為、彼女(ドキンちゃん)に喜んでもらいたいため。実に人間らしい行動と言えるでしょう。
 ですが、アンパンマンの行動理念は違います。彼は

みんなのため

にしか動かないのです。

みんなが困っているから、バイキンマンを懲らしめよう!」

 これだけです。他の理由などほとんどありません。
 ある意味、もっとも人間らしくない行動と言えるでしょう。


 さて、ここでみなさんもある事実に気付かれたと思います。

自分のためのバイキンマンVSみんなのためのアンパンマン。

 すなわちこれは……


個人主義VS全体主義



 ということです。
 そして「それいけ!アンパンマン」では、大抵は全体主義が勝利をおさめます。




 現代日本、とくに若い世代では個人主義が最高のものと考えられがちです。

「自分の人生なんだから、自分の好きなようにやるよ」
「会社のためなんてカッコ悪いね」


 ……そんな現代日本に、アンパンマンは警鐘を鳴らし続けているのかもしれません。



そうだ、おそれないで みんなのために
愛と勇気だけが友達さ




 みんな(全体)のためを思えば、どうしても個人を犠牲にせざるをえません。ましてやそれを理解してくれることは少なく、したがって「みんな(全体)のための執行者」が個人からは嫌われることは避けられないでしょう。
 みんなのためなのに、みんなはそれをわかってくれない……。
 そんな悲しみこそが、この詩の真意と言えるでしょう。



 ちなみに、TVアニメのオープニングでは2番が流されていますが、アンパンマンマーチの1番の冒頭はこんな詩です。


そうだ 嬉しいんだ 生きる喜び
たとえ 胸の傷が痛んでも



 アンパンマンの笑顔の奥に隠された苦悩と悲観
そしてあきらめが見えるようです。




















 ……わかっていてやっている確信犯なので「そりゃ違うだろ!」というツッコミは禁止です。







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