「それいけ!アンパンマン」というアニメがあります。
作詞家であり絵本作家でもある、やなせたかし原作の有名なアニメです。
一見、子供向けの楽しいアニメですが、実はこれには深い意味が隠されているのではないでしょうか?
今回はそのことを探っていこうと思います。
私が子供のころ、ちょうどアンパンマンの放映が始まったころに、アンパンマンマーチ(オープニングの歌)が流行ったんですよ。
何度もアンパンマンマーチを歌っているうちに、ふと歌詞に疑問がわいた部分がありました。
それはここです。
そうだ、おそれないで みんなのために
愛と勇気だけが友達さ
……誰もが1度はこの部分に疑問を持たなかったでしょうか?
愛と勇気だけが友達さ。普通なら
「他に友達いないんかいっ!!」
と、軽くツッコミを入れて笑い飛ばすだけのことでしょう。
ですが、良く考えて見て下さい。
愛と勇気……美しくも形が無く、ハッキリとつかみがたい概念です。
そしてこれは誰かに(あるいは自分に)言い聞かせる口調です。
これは深い意味があるのではないでしょうか?
また、その前の文である「そうだ、おそれないで みんなのために」という箇所。
これは何を「おそれるな」と言っているのでしょうか?単純にバイキンマンだとは言えないような気がします。
これにも、深い意味があるのではないでしょうか?
さて、ここでアンパンマンのお話の内容を考えてみましょう。
基本的な流れは
「バイキンマンが悪さをする」
↓
「それによって誰かが困る」
↓
「アンパンマン登場。バイキンマンと戦う」
↓
「バイキンマンが負けて逃げ帰る。誰かは無事に助けられる」
というものです。
前後にいろいろな話が入りますが、基本はこれです。
ここで考えなくてはいけないのは、バイキンマンが悪さをするのは
自分のため
ということです。
自分の欲望(嗜虐心?)を満たす為、彼女(ドキンちゃん)に喜んでもらいたいため。実に人間らしい行動と言えるでしょう。
ですが、アンパンマンの行動理念は違います。彼は
みんなのため
にしか動かないのです。
「みんなが困っているから、バイキンマンを懲らしめよう!」
これだけです。他の理由などほとんどありません。
ある意味、もっとも人間らしくない行動と言えるでしょう。
さて、ここでみなさんもある事実に気付かれたと思います。
自分のためのバイキンマンVSみんなのためのアンパンマン。
すなわちこれは……
個人主義VS全体主義
ということです。
そして「それいけ!アンパンマン」では、大抵は全体主義が勝利をおさめます。
現代日本、とくに若い世代では個人主義が最高のものと考えられがちです。
「自分の人生なんだから、自分の好きなようにやるよ」
「会社のためなんてカッコ悪いね」
……そんな現代日本に、アンパンマンは警鐘を鳴らし続けているのかもしれません。
そうだ、おそれないで みんなのために
愛と勇気だけが友達さ
みんな(全体)のためを思えば、どうしても個人を犠牲にせざるをえません。ましてやそれを理解してくれることは少なく、したがって「みんな(全体)のための執行者」が個人からは嫌われることは避けられないでしょう。
みんなのためなのに、みんなはそれをわかってくれない……。
そんな悲しみこそが、この詩の真意と言えるでしょう。
ちなみに、TVアニメのオープニングでは2番が流されていますが、アンパンマンマーチの1番の冒頭はこんな詩です。
そうだ 嬉しいんだ 生きる喜び
たとえ 胸の傷が痛んでも
アンパンマンの笑顔の奥に隠された苦悩と悲観、 そしてあきらめが見えるようです。
……わかっていてやっている確信犯なので「そりゃ違うだろ!」というツッコミは禁止です。
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